概要
「exA-Arcadia」は2019年に市場投入されたJVSシステム基板です。
ゲームセンターなどアミューズメント施設向けの商品ですが、個人向けにも販売が行われています。
Windowsカスタムベースで動作しているため、さまざまな開発環境が利用可能。開発および参入のコストが低い点を特徴としています。
ゲームの供給方法は4本までのROMカートリッジを挿入する形で、ネットワーク不要で動作します。
ビジネスモデルとしては買い切り型のため、ネットワーク課金などが一切不要という、ある意味ネオジオ(MVS)のビジネスモデルを踏襲したシステムとなっています。
ゲームセンターなどのオペレーター側のメリットは
・マザー及びROMのみの購入が可能 (近年の他社オペレーター向け販売は筐体一式が標準)
・大規模なインフラを必要としない
・長期運用の場合は利益が継続する
反面デメリットは
・初期導入コストがある程度必要
(2022年3月現在、マザーは275,000円。各ROMカートリッジは1本55,000円〜220,000円)
・アップデート対応は(現時点では)直接対応
となります。
以下、本サイトによる解説
ゲームセンターはともかく、なぜ個人購入の需要があるのか?
exA-Arcadia で発売されるゲームは、低遅延であることが徹底的に追求されています。
追加要素があるとはいえ、元ゲームと「静止画ではほぼ同じ」に見えるものでも、環境を揃えて実際に操作した感覚は全く異なる体験になることがあります。
特にコアなシューティングゲームマニア層など、日常的に1~2フレームの遅延を体感できるユーザーにとっては、他に代替が存在しないプラットフォームになりつつあります。
収益モデルについて
2019年になぜexA-Arcadiaが登場したのかを解説する前に、既存のゲームセンターの収益モデルを理解する必要があります。
非常に大雑把に説明すると、以下のようになります。
(あくまで一般向けの大雑把な解説です。細かな差異や例外についてはご容赦ください)
1978年 インベーダーブームによりアーケード市場規模が爆発的に拡大
1980年代~90年代中盤
基板買い切り (1枚 15~25万円前後)+筐体(セットで50万円前後~徐々に価格上昇)
リース運用 (ハードウェアのリースや、インカムを一定比率で折半など)
1990年~2000年代
格闘ゲームのブームにより人気タイトルの利益増加。
基板価格の高騰。人気IPは複数筐体セット販売など強気な展開も登場。
2000年代~
ビデオゲームの市場縮小。
ネットワーク対戦台の登場で、1ゲームあたりの課金モデルが登場。
2010年代~
配信台登場。従量課金制の普及(NESiCAxLive、APMなど)
(筐体一式を購入すれば新作ゲーム導入は無料。ただしインカム100円のうち30円から60円近くをメーカーと決済会社が徴収。ネットワークインフラもゲームセンター側負担)
PCB単体販売の買い切りビジネスは、ほぼ終焉。
大手資本以外の零細アミューズメント施設が続々と撤退。
2020年代~
大手メーカーすら自社アミューズメント施設を再編&売却。
ビデオゲーム配信台のサービス終了も視野に入る。
1990年代の格闘ゲームのブームを頂点として、買い切り型の基板ビジネスは、市場の大幅縮小を辿っています。家庭用とのハードウェア性能差がなくなってきたことや、家庭用でのネット対戦環境の確立、スマートフォンなどカジュアルゲームに市場自体が移ったことなど、様々な要素が重なり、ゲームセンター市場自体が下降の一途となりました。
2020年代の現在では、一部のレトロ系ゲームセンターなど特殊な事例を除いては、ビデオゲーム筐体自体が非常に少なくなっています。
そのような状況下で2019年に稼働を開始したexA-Arcadiaは、配信台が標準化した市場の中で、あえて旧来のビジネスモデルに近い収益モデルを売りにしています。
かつては1991年に登場したMVSが、風俗営業法に抵触しないスーパーや駄菓子屋などに「場所と電気代を借りて利益を折半」といったビジネスで設置台数を増やしていましたが、一方ゲームセンターでは比較的安価なシステム基板を買い切りで運用できることで、格闘ゲーム全盛期まで圧倒的な支持を得ていました。
exA-Arcadiaの買い切り、複数ソフト運用可能といったビジネスモデルは、MVSと共通する特徴を持っています。
既存の筐体にコンバート設置することができるため、トータルコスト的に、稼働さえあればゲームセンター側にメリットが大きい収益モデルとなります。
海外のビデオゲーム市場について
2022年現在、日本国内のゲームセンター市場規模は下降の一途ですが、海外ではいまだに盛況な地域があり、exA-Arcadiaの買い切りビジネスが歓迎される土壌があります。
買い切りのビジネスモデルは、国外でも中小のビデオゲーム業者に歓迎されているようで、実際に exA-Arcadiaで発売された日本産のゲームも、海外市場からの予約段階で日本国内の総受注数を上回るタイトルが見受けられます。
アメリカ市場ではラウンドワン系列の施設にも多数の導入が決まり、55インチのexA-Arcadia専用筐体が投入されるなど、地域によって大きく盛り上がっているようです。
exA-Arcadiaの運営会社について
開発元
exA-Arcadia PTE. LTD. (シンガポール法人)
exA-Arcadia LLC. (アメリカ法人。北米販売元)
国内販売元 株式会社Show Me Holdings (日本法人。六本木オフィス)
両社の代表は日本在住の台湾系アメリカ人実業家 Eric “ShouTime” Chung 氏。
日本のアーケード市場に造詣が深いヘビーゲーマー&コレクター。
六本木のオフィス&開発拠点を含め、本サイトでの取材は全て日本語で応対して頂いています。